2013年4月10日水曜日

序文(地の巻)

筆者は総合商社の監査部に5年間在籍し、この間30の組織の監査を行った。監査の対象の組織単位は本社の営業部であり、また事業会社(連結子会社)であり、業種は総合商社ならではで、機械、食品、エネルギー、繊維、物資、また情報等の多岐に亘る。商社であるので製造業や小売業の監査先は極めて限定され、また病院や非営利組織は監査の経験はない。しかし、扱い商品やサービスが異なり、業種によってカルチャーも全く違うとまで言い切れる中で、業種を超えた監査の経験を積むことにより、それぞれの監査の実施経験に共通する「何か」を感じたことは事実である。この「何か」を言葉に表すことができれば、今後の監査のレベルアップに役立てることができるであろうし、監査に従事する監査人の一助になると考えた次第である。

”何か感じたことを言葉にする”、即ち「言語化」は、深い思考活動及び精神活動を必要とする厄介な作業であることを思い知らされることになる。少し具体的に述べると、過去の一つ一つの経験を集めて、そこから共通性を抽出し、それをシンプルな言葉に帰納させて抽象化する。冒頭のスティーブジョブスの言葉の通り、シンプルにする、言い換えれば物事を抽象化する、あるいは概念化するという作業は大変なことであるが、一旦抽象化し概念(モデル)にすればそれをフレームワークとして様々な局面で活用することができるだろう。

監査の本来の仕事は、「業務の間違いさがし」でなく、内部統制システムの整備、運用状況をチェックすることであり、常に組織の本質、根幹の部分に目を向ける作業と言い換えることができる。この意味で、物事を抽象化する作業を常に繰り返し行う活動と言える。

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